第27回 NY MBAの会 講演内容レポート

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【第27回NYMBAの会開催レポート】
4月27日(木)第27回NY MBAの会を開催いたしました。
今回は『和製Robotics Design Furnitureの米国進出』をテーマに、電動昇降機能付き洗面台“LAP”シリーズ(現在特許申請中)の開発・販売を手掛ける株式会社I&C代表取締役 佐田幸夫さんをお招きし、ロボティクス、センサ、IoTなど最新技術を搭載し、デザイン性と機能性を兼ね備えた製品をいかに米国市場に進出させるかについて参加者の皆さんと議論を深めました(参加者30名、うちMBAホルダー9名)。

同社は2008年に設立されたベンチャー企業で、『利用者の身長や状態にあわせて生活のリズムをつくる』をコンセプトに20~30万円の医療・福祉施設向けから、高級レジデンスや商業施設向けの高価格帯まで幅広いニーズに対応する商品開発をしています。本年1月には米国法人を設立し、米国進出に向けて本格始動しました。昨年にはメガバンクと医療系ベンチャーキャピタルから1億円の資金調達に成功し、次のステップとしては3億~5億円の資金調達を目指して、2020年までに売上163億円(内、LAP商品の欧米販売比率40%)、従業員80名の事業規模を目指しています。
これまでの日本国内およびアジアにおける販売戦略の反省点として、ゼネコンや設計事務所にアプローチをしてもブランド認知度の低さや人脈の乏しさからスムーズに参入することができませんでした。この経験を活かし米国では、医療系コンサルや代理店販売を中心に販路拡大を計画中です。また、アジアではローカライゼーションに特化しすぎた結果、競合他社に模倣されたケースを踏まえて、今後はデザイン性を重視した商品差別化を図ります。なお現時点では、米国市場における医療・福祉のニーズが見えないことから、まずは個人宅用インテリアから販売を開始します。
これらの状況を踏まえ、参加者がコンサルタントの立場、投資家の立場、経営者の立場に分かれて同製品の米国進出に必要な戦略を議論しました。

<コンサルタントチーム>
米国市場は、洗面台製造業者は20社強、ディストリビューターは400~600社。販路先としては住宅、商業、病院、福祉施設が考えられ、現在市場を牛耳る大手企業は存在しないことから、参入障壁は低いと考えます。さらに、ニッチなニーズを的確に応えることにより、同社売上目標(2020年までに米国年間12,000台販売)を達成することは可能と判断。そのためには、高価格帯で洗面台を販売している競合他社をさらに分析したうえで、機能性とデザイン性のいずれかを重視するのかを明確にする必要があります。中途半端な商品だと受け取られてしまうリスクを避けるためです。
以上の分析から、ターゲットは個人向け富裕層に絞り、機能性を重視し、デザイン性については個々の嗜好にカスタマイズする仕組みを導入することで、販路拡大につなげるという提案が出されました。

<投資家チーム>
1.投資判断基準
投資家はマーケットサイズで判断するため、短期的な成功しか見込めないビジネスには投資しません。また、多くのベンチャーキャピタルは成功した一握りの利益に頼っているため、30%という低い確率でも成功する見込みがあると判断すれば投資を決断することが多いです。
2.キャッシュフローマネジメント
基本理論として、ベンチャー企業のキャッシュフローは最初Jカーブを描くことが多く、初期投資に係る費用に加え、生産コストがかさみキャッシュが不足します。LAPのケースでは、生産はアウトソーシングするため初期設備投資はないものの、製造にかかる調達コストの支払い期限や販売代理店からの回収期限のバランスを見誤ると、キャッシュが不足するリスクがあります。
3.リスクリターン
リスクを明確にする必要があります。製品がディストリビューターに移点したときに販売責任を負わせる場合、ディストリビューターへの販売価格は低価格にならざるを得ません。他方、責任を負わせないのであれば、高価格でディストリビューターに販売することができますが商品販売保証はありません。キャッシュフローマネジメントを加味し、販売計画を立てる必要があります。

以上の分析から、現状、中国で売上が伸びているなかで米国に進出する必要性や、投資資金使途に不明確な部分が多いものの、これらが明確になれば投資価値のあるビジネスだと判断しました。

<経営者チーム>
機能性かデザイン性かどちらかを絞る場合、LAPの魅力は機能性と認識し、今後の開発をしていくべきだと判断しました。基本的にはB to Bに特化し、B to Cにおいては特別なニーズがある層にのみリースします。また、多くのディストリビューターを利用するのではなく、B to Bおよび富裕層向けに販路を拡大できる代理店を絞ることなどを提案しました。

最後に佐田社長からは、「国内の課題と重なる部分も多く、商品の反応に関してアプローチを変えていく必要があると感じたため、今後デンマークのデザイナーと共同開発する際にはターゲットを明確にしたい。また、介護のニーズが低いという意見が多くあったが、将来的には在宅介護に特化したいと思っているので、米国でも一般家庭用から在宅介護に発展させたい」という強い意気込みを伺いました。

次回のMBAの会は、5月25日(木)午後7時から、いつものGラボにてロンドンビジネススクール教授リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著『ライフシフト』を題材に、1年ぶりのブッククラブ形式で100歳時代の戦略的人生設計について皆さんと議論したいと思います。ご参加お待ちしております。